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水に溶解するゲスト分子のクラスレートハイドレートの生成

更新日: 2016年09月27日

水に溶解するゲスト分子のクラスレートハイドレートの生成(Formation of Clathrate Hydrates of Water-Soluble Guest Molecules)


米国化学会の雑誌Journal of Physical Chemistry Cに我々のグループの論文が掲載されました。

Yagasaki, T.; Matsumoto, M.; Tanaka, H. Formation of Clathrate Hydrates of Water-Soluble Guest Molecules. J. Phys. Chem. C, 120, 21512 (2016).
  
ハイドレート(包接水和物)とは、一般には水に溶けにくい小分子が水とともに凍った固体結晶ですが、まれに水溶性の分子がハイドレートを形成することもあります。  
この研究では、ethelen oxide (EO)とtetrahydrofuran (THF)のハイドレートの生成過程を明らかにしました。どちらの分子も常圧で水と完全に混和します。これらのゲスト分子は、水中のハイドレート表面に容易に近づけるため、メタンのように水に溶けないゲストのハイドレートと比べて、非常に速く結晶成長が進行します。EOとTHFは、どちらも環状のエーテルですが、そのハイドレートの成長速度に大きな違いがあることがわかりました。これは、THFが大きく、ハイドレートの小ケージに入ることができないにも関わらず、固-液領域では小ケージに吸着してしまうことが原因です。また、EOハイドレートは、成長だけでなく核生成も起こりやすいということが分かりました。多くの理論研究でメタンが用いられていますが、この研究は、その代わりにEOを使うことが、計算効率の観点からとても有用であることを示しています。