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氷は電子よりもプロトンをよく伝導することが昔から知らせています。氷の中のプロトンはJaccard機構により、高速に伝搬すると考えられています。{{fn しかし、いまのところJaccard機構を直接確認した実験はありません。}}

極低温の氷の中のプロトン移動においては、プロトン移動の1ステップ(便宜的に素過程と呼ぶ)を精密に調べても、それが連鎖的に起こった結果を説明することはできません。なぜなら、プロトンが移動することで、プロトン移動経路に沿って水素結合ネットワークのトポロジーが変化し、それがプロトン自身の動きに拘束を与えるからです。つまり、溶質である氷は、プロトンとは別個に揺らぐ客体ではなく、プロトンの移動によってのみ構造を変えることができるという点で、溶質と溶媒の分離が全くできない特殊な系であると言えます。素過程という捉え方は、隣の格子点にプロトンが移動するプロセスを説明してくれますが、グローバルなプロトンの移動と、それにともなう氷のネットワークの変化、さらにはプロトンから見たポテンシャルエネルギー地形の変化を理解するためには、グローバルな水素結合ネットワークのトポロジーがどのように変化するかを理解する必要があります。

プロトンが一歩移動するたびに経路は二分樹状に分岐し、それぞれがすべて異なるネットワークトポロジーを実現します。その中には単調に全ポテンシャルエネルギーが低下する経路が必ず存在することがわかりました。長い放浪の後には、プロトンの溶媒和エネルギーはほとんど変化しないものの、氷自体が秩序化するために、プロトンを含んだ氷全体が安定化します。溶媒和エネルギーが変化しないのに全体が安定化する、という点で、プロトンは氷の秩序化の触媒として働くと言えます。
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