[water]

「クラスタ」「小さい」「水分子」のキーワードでgoogle検索すると、トップにくる天羽さんのページはいいとして、それ以外ほぼすべて眉唾、というのも困ったもんだね。

怪しげな水の宣伝があまりに多いので、警鐘のためにこのページを設けています。水に機能を付与する(クラスタの小さい水、磁化水、六員環の豊富な水、などなど)高価な装置や、高価な水加工物を購入する前に、ぜひ以下のサイトをごらんください。

クラスタとは

他人のページに投げるだけでは無責任なので、計算機シミュレーションで水を研究している立場からの見解を書いておきます。

クラスタとは、ぶどうの房を意味し、科学の用語としては、「ひとつながりの塊」の状態を指します。何かのクラスタを定義する場合には、どのような状態がつながっている状態で、どのような状態がつながっていない状態かを、まずはじめに定義する必要があります。

ちかくにある水分子同士が水素結合しているかどうかを、つながりの判断基準としてみましょう。氷の中では、水分子は隣接する4つの分子と水素結合し、水素結合ネットワークでできた結晶構造を形成していますが、液体状態でも、水はほぼ4分子と水素結合しているので、氷と同じように、ほぼすべての水分子が水素結合ネットワークを形成して緊密につながりあっています。このような構造で、周囲と水素結合せずに孤立した水分子や、水分子クラスタはほんのわずかにしか見付かりません。


水の中には、水素結合によりクラスタ化した水と、それ以外の水分子(孤立分子)が混在している、というモデルは、計算機シミュレーションが行なわれる以前の1960年代にはすでに懐疑的に見られていました。もし、そのような孤立した水分子や分断された水素結合クラスタが多量に存在するなら、水はもっと容易に揮発し、沸点は100度よりもはるかに低くなり、蒸発熱も小さくなるでしょう。水の蒸発熱が、氷の昇華熱とそれほど変わらないという事実は、水の中の水素結合ネットワークが、氷と同じように緊密であることを意味しています。

そもそも水素結合でつながりあったクラスタ構造なるものが存在しないので、それを外力(磁場など)により大きくしたり小さくしたりできる、という主張は意味不明です。

ただし、上にも書いたように、なにをもってつながっているとみなすかによって、クラスタの定義や大きさは変わりえます。例えば、氷に類似した部分構造の塊をクラスタと呼ぶことにすれば、それは液体の水の中にはわずかにしか存在せず、散在した小さなクラスタになっています。標高何m以上の地形を山と呼ぶかによって、山の個数が変わるようなものです。もし山の基準を、標高1m以上と定義すれば、本州全体が巨大な山とみなされるのと同じように、何をもって「つながっている」とみなすかをはっきりさせずに、クラスタという言葉を使うのは誤解をまねきます。また、「つながり」を適切に定義しないと、クラスタと判定される部分とそれ以外の部分の物性に有意な差が見出せないので、クラスタというアイディアをもちこむ意味がありません。定義を明確にせずにクラスタという言葉を使っているとすれば、誤解させる意図があると疑うべきでしょう。

六員環水

ついでに、最近「水商売」で新たに使われはじめた五員環、六員環なる言葉についても述べておきましょう。上にも書いたように、水分子はそれぞれ4本ずつの水素結合により緊密につながりあってネットワークを形成しています。もし、これが2本程度しか結合がないとすれば、ひとつながりの分子は鎖状になり、場合によってはどこかで途切れてしまうかもしれませんが、4本も結合をもっていると、そのような「末端」ができることはまずありません。ということは、水の水素結合ネットワークはいたるところ環になっているわけです。実際、氷の結晶構造を見ると、6角形(正確には、平たい形ではないので六員環と呼びます)だけで組みたてられていることがわかります。

液体の水の中にも、六員環や五員環は無数に存在します。正確に言えば、85%〜90%の分子が五員環もしくは六員環に属しています。ということは、六員環を形成している水が多いから体にいい、というような説はそもそも無意味です。わずかに存在する、五員環や六員環に属しない分子も、平均からいちじるしくずれた物性を持つことはありません。水の中には確かに様々な不均一性があり、異なる物性をもつ部分の集合と言えますが、少なくとも、五員環、六員環の分布はそのような不均一性を反映していません。水に圧力を加えたり温度を変化させると、六員環や五員環の存在比率は若干変化しますが、胃に入った時点で、体温常圧の環境にもどってしまいます。

上にも述べたように、水の中にクラスタ構造があるという説は1960年代以前には仮説として受けいれられていたこともありますが、六員環を形成する水が特別な物性を持つという説は過去にも現在も見たことがありません。そのような商品を販売している方には、ぜひ、参考文献を教えていただきたいと思います。

 その他

機能水と称して、多種多様のあやしい水が販売されています。日本人はこの手のオカルトに騙されやすいのかなあと思っていましたが、英語でも同じような機能水のウェブページは無数にあるようです。

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[2005年10月19日]

[2004年10月26日]

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