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!!リスクマグニチュードとは
毎日、新聞には悲惨な事故や事件がたくさん載っています。これらの事件事故の記事は、世論の注意を喚起し、より良い社会を実現するのに必要なものです。

一方で、新聞に限らず、メディアの情報には必ずバイアスがかかっています。バイアスというのは何も政治的に偏った主張のことだけではありません。

例として、狂牛病をとりあげてみましょう。狂牛病は今や日米関係をもゆるがす大問題になっています。ひところは毎日トップニュースにとりあえられていました。しかし、狂牛病に実際にかかった日本人は一年で一人しかいません。

これを確率で考えてみます。日本の全人口が等しい確率で狂牛病に罹患するとすれば、狂牛病によって死ぬ確率はおおよそ一億分の一です。この数字は、あなたがたまたま購入した宝くじが1等に当選する確率よりもずっと低いはずです。国の施策としては、狂牛病をこのまま放置するのは許されないことだとは思いますが、一方で自分が当事者になる確率はほぼ無視して構わないと言えます。

そこで、事件の政治的な重要性といった社会的な評価はおいといて、自分がその事件の当事者になる確率でその事件の重要度を測ってみることにします。例えば、あなたが今年一年間に、交通事故で負傷する確率は0.01です。狂牛病で死ぬ確率よりも百万倍も大きいのです。自分が当事者になるかどうか、という見地からは、新聞にのっている事件の大半は、実は自分には縁もゆかりもないのです。逆に、すでに日常化してしまって気にもとめないようなことのなかに本当のリスクが潜んでいると言えます。

自分が当事者になるリスクを、何かの指標で表現してみます。いろんな尺度のとりかたがあると思いますが、リスクが大きいほど数値が大きくなるような指標がいいでしょう。ちょうど、地震の規模を表すのにマグニチュードという単位を使うように、自分が当事者になるリスクの大きさをリスクマグニチュードという値で表現することにします。リスクマグニチュードの数学的定義は次のような感じです。
 (自分が事件の当事者になる確率)の常用対数+8
日常的な言葉で言いかえれば、
 (日本人一億人のうち、事件の当事者になる人の数)の桁数
がリスクマグニチュードです。

リスクマグニチュード0は、日本人口のうちひとりだけが当事者になる、という意味であり、リスクマグニチュード8は日本人口の全員が当事者になる、ということになります。
例えば、日本全国の年間交通事故負傷者数は約100万人、日本の人口は一億二千万人ぐらいですから、一億人あたりになおすと100万人弱、桁数では6程度になりますから、この一年で交通事故で負傷するリスクマグニチュードは約6となります。一方、この一年で狂牛病で死ぬリスクマグニチュードは0です。

一つ、注意しておかなければいけないことは、確率計算の要素には、人数だけでなく時間も含まれるということです。私がいろいろなリスクを紹介する場合には、基本的に、一年間の間に当事者になる確率からリスクマグニチュードを計算するようにしますが、当然ながら10年間ではリスクは10倍になり、リスクマグニチュードは+1増えます。直近一年ではまず当事者にならなさそうなことでも、残りの人生ではかなりの確率になる場合があります。

なお、このアイディアは、もともとは大西科学さん(http://onisci.com/535.html)のものです。ただし、もと記事では、めったにおこらない良いことの尺度として書かれていますが、ここでは不幸な事件にかかわってしまう尺度としてわかりやすいように、尺度の取りかたを変えてあります。

(追記)オーディオ用語で例えるなら、メディアのやっていることはダイナミックレンジコンプレッサー。現実にはめったに起こらないことを強調して報道することで、ノイジーな環境でも稀な事象を見逃がさないようにする。メディアリテラシはその逆のダイナミックレンジエキスパンダー。メディアが圧縮した情報を、正しい情報濃度に逆変換する。新聞記事の大きさを、リスクマグニチュードに比例するように変換すると、ずいぶん見ための違う(しかし面白みにはかける)レイアウトになるだろう。
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