地球上では、水のあるところには、極限的な環境であっても生命が存在します。(例えば、熱水鉱床の中、岩塩の中など。)
一方、生物の体の半分以上は水でできています。水は、生体内でミネラルや有機物を解かす溶媒であるだけでなく、積極的に生体内化学反応に関与しており、またコラーゲンなどの形で、構造体としても機能しています。ほかに、レンズ、冷却材、輸送媒体、表面保護材(粘膜)としても活用しています。現在の地球上の生命はなぜこんなにも水に全面的に依存しているのでしょうか。
生命は自らの環境を最大限に利用できるように進化します。そして、環境を構成する最大の要素もまた水です。水が地球上では最も手にいれやすい液体であるため、生命は水に最大限に適応して進化してきました。
水は、様々な特異な物性をもちますが、水の性質が他の物質に比べて特殊かどうかに関係なく、与えられた環境には最大限に適応するように生命はプログラムされているので、これらの特異な物性は生命と非常に深く絡んでいると考えられます。したがって、生命研究が発展すればするほど、水の持つ様々な特異な物性の理解が必要とされるようになると私は考えています。
一方で、生命が進化システムを獲得し、その環境に水が大量にあったという2つの事実が、生命をして水に依存せしめる結果となっただけで、水が生命にとって必須であるとは言えないと思うのです。つまり、もし太古の生命がメタンの海の中で生まれ、競いあって進化できるようになったなら、その末裔はメタンに極めて依存した形で進化しつづけるだろうということは容易に想像できます。客観的に見てメタンは水に比べると平凡な分子ですが、だからといってメタンでは生命は作れないという理由にはなりません。「水は特異な性質をもっていたおかげで、生命はここまで生きのび、進化することができた」という言説には飛躍があると思います。
補足: 冒頭にも書いたように、液体の水のある環境なら、生命は極限的な環境でも生きのびているものがいます。一方で、生命は凍った水=氷にはめっぽう弱いです。どうも体内での水の結晶化を防ぐような工夫は数あるけれど、結晶化しても生きのびられるようには進化できなかったようです。
[2006年9月18日]
[2004年10月26日]
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