高校生の皆さんへ

水は他の性質と異なる,独自の性質に富んだ不思議な物質です.非常に身近な存在ではありますが,いまだに解明されていない多くの謎を秘めています.私たちの研究室は,そんな水の性質に関するいろいろな考察を化学的な立場から行っています.そんな変わった水の性質を例にとって御紹介しましょう.

水は0℃で氷になります.冷凍庫を開けたら氷はすぐにも見つけられます.一見すると変哲の無い氷も,化学的に詳しく見てみると,実は10種類以上に分類できます.氷の存在する環境の条件次第で氷は多様な結晶構造をとり得るのです.ここまで述べてきた氷は三次元的な構造をしています:

Ice Ih
冷凍庫で見つかる氷Ihの結晶構造

カーボンナノチューブと呼ばれる炭素原子から構成された筒状分子に閉じ込められた水は,一次元の空間に閉じ込められていると見なせます(カーボンナノチューブは非常に細い為).同様にスリットに挟まれフィルム状になっている水は,二次元空間に閉じ込められていると見なせます(フィルムが非常に薄い為).

carbon nanotube
カーボンナノチューブの模式図(準一次元)
この筒状の空間にに閉じ込められた物質は新しい性質を示す事が期待されます.

そのような空間的な制限が課せられた二次元や一次元の空間でも水は凍るのでしょうか?もし凍るのだとしたら氷点は何度で凍るのでしょうか?そして,その氷はどのような構造をしているのでしょうか?

これらの疑問の考察には,非常に短い時間の観測と極端な実験条件が求められます.
ここで理論計算による計算機シミュレーションの出番です!
計算機シミュレーションは,実験を行った場合と同様の物理量を計算から予測することが出来るのです.

そのシミュレーションの結果,氷が図に示したような新しい構造をとり得ることが予測されました:

pentagonal ice
カーボンナノチューブ内の水(準一次元)
液体状態(左) から 結晶(右) に凍っています.
slit ice
スリットに挟まれたフィルム状の水(準二次元)
液体状態(左) から 結晶(右) に凍っています.

計算機シミュレーションは上で述べたような,実験で取り扱う事が難しいようなケースに対して非常に有効な方法です.化学的事象への新しい視点が得られると同時に,新しいアイデアも生み出す,実験とは一味違った化学へのアプローチです.
このような利点を生かしつつ,実験と協調を図り,水の性質を理解し,明らかにすることを目的として頑張っています.